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―スピンオフ― 変わらぬ愛情・優しい心 『黒柳リュウジ✗芽衣子編』29

last update 最終更新日: 2025-01-20 18:08:36

芽衣子side

こんなにも真剣な表情のリュウジをはじめて見たかもしれない。

――俺は、芽衣子を好きになってから一度も気持ちが変わったことがなかった。

美羽さんが教えてくれた果物言葉を思い出す。

――変わらぬ愛情・優しい心ですって。これ、結構当たるんですよ!

もしかしたら、私がリュウジの愛を知ろうとしなかったのかもしれない。

リュウジは、私なんかをずっと前から本気で愛してくれていたのかもしれない。

「リュウジ……」

言葉が続かなくて込み上げてくる。

私は、リュウジが好き。

何を考えているのか、わからないこともあるけど、すごく優しくて繊細な人なのだ。

涙がポロッと零れ落ちてくる。

「リュウジ、結婚しよう」

「芽衣子……」

リュウジは私の手をすっと取って、左手の薬指に指輪をはめてくれた。

ピッタリサイズでダイヤモンドがキラキラと輝いている。

私とリュウジは微笑み合うとキスをした。抱きしめ合ってお互いの体温を確かめ合う。

一番しっくりくる。

色んな試練があるかもしれないけど、私のパートナーはリュウジしかいない。

「入籍は大樹が先だから来年になるかもしれないけど、堂々と交際宣言したいと思う」

「わかった。ありがとう」

額をくっつけ合う。

そのまま二人でベッドルームに向かった。

リュウジに組み敷かれる。

久しぶりでドキドキしてしまう。

まだ病み上がりだけど、いいよね。

目をそっと閉じると唇が重なり合う。

お互いの柔らかい唇の感触を確かめ合い舌を絡ませる。

体がだんだん熱くなってきた。

もっといっぱい、リュウジは触ってほしいと思っていたら、動きを止めた。

「……病み上がりだもんね。もう少し我慢する」

名残惜しそうに頭を撫でて起き上がった。

「芽衣子のこと大事だし」

はにかんで言われると、可愛すぎるんですけど!

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    「妹が置いていった服ならあるけど。サイズ合うかな」「勝手に借りていいのかな?」「心配なら聞いてやるか」スマホで電話をはじめる。「あ、舞? 久実に服貸していい?」『えー! 家にいるの? 泊まったってことは、えーなに? 付き合ってるとか~?』ボリュームが大きくて話している内容が聞こえてしまう。「付き合ってくれないけど、まぁ……お友達以上だよ。じゃあな」お友達以上だなんて、わざとらしい口調で言った赤坂さんは、得意げな顔をしている。「……じゃあ、お借りするね」黒のニットワンピース。着てみるとスカートが短めだった。ひざ上丈はあまり着たことがないから恥ずかしい……。着替えている様子をソファーに座って見ている。「見ないで」「部屋、狭いから仕方がないだろう」「芸能人でお金もあるんだから引っ越ししたらいいじゃない」「結婚する時……だな」その言葉にドキッとしたが、平然を装った。私と……ということじゃない。一般的なことを言っているのだ。メイクを済ませると赤坂さんは立ち上がって近づいてくる。見下ろされると顔が熱くなった。「可愛い。またやりたくなる……」両頬を押さえつけたと思ったら、キスをされる。吸いつかれるような激しさ。顔が離れる。赤坂さんの唇に色がうつってしまった。「久実……愛してる」……ついつい私もって言いそうになった。「せっかく 口紅塗ったのに汚れちゃったじゃないですか」 私はティッシュで彼の唇を拭った。 すると 私の手首をつかんで動きを止めてまた さらに深くキスをしてきた。「……ちょっ……んっ」「久実、好きって言えよ」「……時間だから行かなきゃ」

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   ―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』78

    久実sideふんわりとした意識の中、目を覚ますとまだ朝方だった。今日は休みだからゆっくり眠っていたい。布団が気持ちよくてまどろんでいると、肌寒い気がした。裸のままで眠っている!そうだった……。また、赤坂さんに抱かれてしまったのだ。逃げればいいのに……逃げられなかった。私の中で赤坂さんを消そうと何度も思ったけど、そんなこと無理なのかもしれない。すやすや眠っている赤坂さんを見届けて、ベッドから抜けようとするとギュッとつかまれた。「どこ行くつもりだ」「帰る」「………もう少しだけ。いいだろ」あまりにも切ない声で言うから、抵抗できずに黙ってしまう。強引なことを言ったり、無理矢理色々したりするのに、どうして私は赤坂さんのことがこんなにも好きなのだろう……。もう少しだけ、赤坂さんの腕の中に黙って過ごすことにした。太陽がすっかり昇り切った頃、ふたたび目が覚めた。隣に赤坂さんはいない。どこに行ってしまったのだろう。自分のスマホを見るとお母さんから着信が入っていた。「……ああ、心配させちゃった……」メールを打つ。『友達と呑みに行くことになって、そのまま泊まっちゃった』メッセージを送っておいた。家に帰ったら何を言われるだろう……。恐ろしい。「おう、起きてたのか」赤坂さんはシャワーを浴びていたらしい。上半身裸でタオルを首にかけたスタイルでこちらに向かってきた。あれ……昨日は一人じゃ入れないって言ってたのに。なんだ、一人で入れるじゃない。強引というか、甘え上手というのか。私はついつい赤坂さんに流されてしまう。そんな赤坂さんのことが好きなのだけど、このままじゃいけないと反省した。「今日、休みだろ?」「……うん」「じゃあ、大樹の家行こう」「は?」唐突すぎる提案に驚いてしまう。「暇だったらおいでって連絡来たんだ。美羽ちゃんも久実に会いたがってるようだぞ」美羽さんの名前を出されたら断りづらくなる。優しい顔でおいでと言ってくれたからだ。「でも……服とかそのままだし……」「そこら辺で買ってくればいいだろ」「そんな無駄遣いだよ」まだベッドの上にいる私の隣に腰をかけた。そして自然と肩に手を回してくる。「ちょっと……近づかないで」「なんで?」答えに困ってうつむくと赤坂さんは立ち上がってタンスを開けた。

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